投稿日時 2018-11-27 01:32:02 投稿者 ぺとろ千歌 このユーザのマイページへ お気に入りユーザ登録 |
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夜叉姫が目を覚ますと、両手を革の拘束具で縛られていた。 奢侈な胡様式の敷物から起き上がり、焦点の合わない瞳で見回す。壁は剥き出しの岩肌で床には酒瓶が転がっており、まるでガンジャ窟のような趣である。 全身黒い装束の男が、油艶のある黒髪を揺らせてやって来る。 「ようこそ……湯ノ里のお姫様」 「どうして……それを」 手灯で漸く照らされたのは男というより、夜叉姫にほど近い歳の少年であった。袖の無い長着の衿を大きく開け、破落戸や傾き者のような鎖帷子を見せている。特徴的な流線の入れ墨がある目元は涼やかで、昏黒へと続く深淵が覗く。 少年は濡れた黒檀色の髪を鮮やかに散らし、夜叉姫の顔がよく見えるように顎を持ち上げた。次に尖ったつけ爪の人差し指と親指で乳房を抓むと、服の上から柔らかい感覚に突き立てる。 「あうぅっ!」 「いい肌理だ……美味そうだな」 夜叉姫は身を引き、構える。 「フッ、怯えるな。生憎、食人の嗜好は無い」 「――貴方は?」 「……お前を娶る者だ」 兇険さの漂う淫靡な漏声に、空気が薙いだ。 挿絵イラストは桃川コバト様の作品です(許可を得て掲載しております。) |
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